食物繊維は、以前は体に必要なものだとは思われていませんでした
食べた食物の栄養素はほとんど小腸までで吸収され、その残りかすである食物繊維は栄養的な価値は乏しいと思われてきました。
食物繊維の大きな特徴は、人が消化・吸収することができない難消化性成分であることです。
食物繊維はそのほとんどが吸収されず体の中を通過します。
体内に吸収されるわけではないのに、なぜ体によいのでしょうか。
それには大腸内の腸内細菌叢(腸内フローラ)が関与しています。
腸内細菌叢の状態の良し悪しが、人の健康に非常に重要な役割を果たしていることがわかってきました。
その腸内細菌の状態を良くするのに、腸内細菌のエサとなる食物繊維が非常に重要であることがわかってきたのです。
今では「第六の栄養素」として重要視されるようになった
食物が小腸から大腸に移ると、食物繊維が大腸に存在する腸内細菌のエサとなります。
そのときに乳酸や酢酸などの酸がつくられるため、大腸内が酸性の環境となります。
善玉菌とよばれる乳酸菌やビフィズス菌などは、酸性の環境で増え、腸内細菌叢(腸内フローラ)を健全な状態に維持してくれます。
食物繊維は主に腸内細菌の栄養になる訳ですが、腸内細菌叢の状態が良くなることで、最終的に私たちの栄養素になっているということですね。
食物繊維には、水に溶けないタイプ(不溶性食物繊維)と水に溶けるタイプ(水溶性食物繊維)があります
不溶性食物繊維
成熟した野菜などに含まれ、糸状のもの、多孔質のものがあり、ボソボソ、ザラザラとした食感が特徴です。
特性として保水性が高く、胃や腸で水分を吸収して大きくふくらみ、腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を活発にし、便通を促進します。
発酵性として大腸内で発酵・分解されると、ビフィズス菌などが増えて腸内環境がよくなり、整腸効果がありますが、水溶性食物繊維より発酵性は低いです。
不溶性食物繊維を多く含む食品として穀類、野菜、豆類、キノコ類、果実、海藻、甲殻類(エビやカニ)の殻などがあります。
水溶性食物繊維
ネバネバとした形状をもつ水溶性食物繊維は、胃腸内をゆっくり移動していくため、糖質の吸収をおだやかにして食後血糖値の急な上昇をおさえます。
水溶性食物繊維には吸着性があり、小腸でコレステロールや胆汁酸を吸収して、スムーズに体外に排泄することで血中のコレステロール値を低下させます。
大腸内で発酵・分解されると、ビフィズス菌などが増えて腸内環境がよくなり、整腸効果があります。
水溶性食物繊維を多く含む食品として昆布、わかめ、果物、里いも、大麦、オーツ麦などがあります。
近年の研究でその存在が明らかとなった第3の食物繊維「レジスタントスターチ」
レジスタントスターチを日本語で訳すと「難消化性でんぷん」となります。
従来でんぷんは小腸で全て分解・吸収されると考えられていましたが、「分解・吸収されにくい性質のでんぷん」の存在が、近年の研究で明らかになりました。
つまり、レジスタントスターチとは食べてもあまり消化されずに、大腸まで届くでんぷんのことになります。
レジスタントスターチを多く含む食品として米や豆類、トウモロコシ、青バナナ、イモ類などがあります。
レジスタントスターチは不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の特徴を兼ね備えている
レジスタントスターチには、不溶性食物繊維のように便のかさを増やしてお通じをよくしたり、水溶性食物繊維のように腸内細菌のエサになって善玉菌の増殖を促したりする機能があります。
善玉菌がレジスタントスターチの糖を分解し発酵すると、短鎖脂肪酸と呼ばれる酸が作られますが、この短鎖脂肪酸には腸のぜん動運動を活発にしたり、腸内環境を酸性に傾けて有害な菌の増殖を抑えたりするはたらきがあり、腸の健康に欠かせません。
中でも酪酸(らくさん)は大腸のエネルギー源となり、重要な存在です。
レジスタントスターチを摂ることで、腸内の酪酸の濃度が高まることがさまざまな研究から明らかになっています。
また、レジスタントスターチを含む食品には食後の血糖値の上昇を穏やかする効果や、血液中の総コレステロールやLDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が低下することも複数の研究で明らかにされています。
食物繊維と同様に、レジスタントスターチはさまざまな面から健康をサポートする成分
食物繊維のチカラを健康維持に役立てるためには、不溶性・水溶性のどちらか一方を摂取するのではなく、両方をバランスよく補うことが大切です。
普段の食生活では水溶性食物繊維が不足しやすいため、とくに意識して摂取する必要があります。
加えて、レジスタントスターチを補うことで、さらに腸内環境の改善が期待できます。
いろんな食材から、バランスよく摂取するのが望ましいと思います。
追記1~腸内環境のチェックのために便の調子を観察しましょう
便の性状の観察については、よければ下記記事を参考にしてください。

便の不調が続いたり、血便や、腹痛などがみられる場合は医療機関の受診を検討しましょう。
40歳を越えたら、大腸がん検診を受けられることをお勧めします。
大腸がんの死亡率を減少させることが科学的に認められ、大腸がん検診として推奨できる検診方法は「便潜血検査」です。
血便、腹痛、便の性状や回数が変化したなどの症状がある場合には検診を受診せず、すぐに医療機関を受診する必要があります。
追記2~なかなか検診に行けない人のために、自宅検診「おうちでドック」を紹介します


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